FHIRリソースに格納するワクチンコード選定について

はじめまして。ALTURA X株式会社の小島です。
弊社ではHL7 FHIRに準拠した健診システムを構築しています。
HL7 FHIRに沿ってデータを格納するには、相互運用性を担保するために標準コードを登録するよう仕様が定められています。
今回は、FHIRに予防接種(ワクチン)情報を格納する際に調査した標準コードの選定についてお話をしたいと思います。
HL7 FHIRとは

HL7 FHIRとは、新しい医療情報交換標準規格のことです。
これまではHL7 2.5など医療機関内の連携を主とした規格が主流でした。
こちらは医療分野独自の規格であり、各ベンダーの独自のカスタマイズが入っていたりと医療機関間の相互運用が難しい状態でした。
対してHL7 FHIRの大きな特徴は、これまで医療標準技術を使っていたものがWebの標準技術(REST)を使うところにあります。
これにより、HL7 FHIRの仕様に準拠してデータを格納することで、医療機関内だけに留まっていたデータが容易に外部連携対応できるというメリットがあります。
以上がHL7 FHIRの概要です。
FHIRリソースにおけるワクチンのコード定義
仕様に準拠してデータを格納するにはFHIRリソースの定義を確認する必要があります。
HL7 FHIRでは、様々な医療情報を「リソース」という単位で表現されています。
ワクチン情報に該当するリソースの構造を調査しました。以下は、ワクチン情報のリソース「Immunization」リソースの構造です。

日本のワクチン情報でCSVコードが適切なのかは不明のため、他の標準コードも含めて調査をすることとしました。
ワクチン情報として格納するコードの選定
CVXコードは国際基準のコードですが、国内にも様々な標準コードがあり、ワクチン情報を含む標準コードはどのようなものがあるのか調査しました。
仕様としては、以下のようなワクチン接種情報を格納する想定です。
- ワクチン名:麻疹
- 接種日:yyyy-mm-dd
- vaccineCode:【ここに入れる適切なコード】
HOTコード
医療用医薬品に付与されるコードです。
薬価基準収載医薬品コード、個別医薬品コード(YJコード)、JANコード、レセプト電算処理システムコードを対応付けしたもの。
- pros
- SS-MIXで使用されている
- 注射(ワクチン含む)と薬剤が薬価収載とは関係なくフルカバー
- cons
- 7、9、13桁で粒度がコントロールできると言われているが例外がいっぱいある
- コード収載が使用開始に間に合わないことがある
リンク:医薬品HOTコードマスター
薬価基準コード
厚生労働省により薬価ごとに設定され、管理されており、厚労省コードとも呼ばれています。
- pros
- 厚労省で管理されており、薬価収載時には必ず存在する
- cons
- 後発品同一薬価同一コード 薬価未収載品(ワクチン含む)が存在しない
リンク:診療報酬情報提供サービス
YJコード
薬価基準収載医薬品コードの場合は統一名収載品目に1つのコードしか付与されないのに対し、YJコードでは統一名収載品目も個々の商品ごとに付与される。
- pros
- 薬価基準コードのうち後発品の鑑別が可能 多くの医療機関で利用されている
- cons
- 1企業の持ち物 薬価未収載品(ワクチン含む) が存在しない
レセプトコード
医療機関が審査支払機関に電子レセプトを提出する際、レセプト電算処理システムで使用する9桁のコード。薬価基準に収載されている医薬品が対象です。
- pros
- 全医療機関で運用可能
- cons
- 後発品同一薬価同一コード 薬価未収載品(ワクチン含む)が存在しない
リンク:社会保険診療報酬支払基金
CVXコード
CVXは CDCと呼ばれる米国保健福祉省が運営する団体が開発、管理しているHL7の標準コードセットです。
ワクチンの種別ごとにコードが採番されています。
上記の調査結果から、以下の理由でCVXコードを採用することにしました。
- 製剤名ではなく、ワクチン単位でコードが採番されている
- 国内の主要なワクチンが網羅できている
- 「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」でもCVXコードが採用されている(参考:接種証明書アプリ QRコードには何が書かれている?)